無意識の意識とは、心理学、哲学等複数の学術分野にまたがり非常に深く、かつ抽象的な概念です。
ですが、あまり難しく捉えずにもう少しライトな感じでビジネスや日常における無意識の意識についてお話ししたいと思います。
とはいえ、前提として概念的に理解できないとうまく説明がつかない部分もありますので、導入部は難しい話になってしまいますがご容赦願います。
無意識の意識の解釈として古典的な理論はジークムント・フロイトの精神分析学によるものですがそこまでは遡らずに現代的な捉え方を理解しビジネス的な解釈を考えてみましょう。
現代的な理論の認知心理学や学習理論では、スキルや知識の習得段階を「意識」から「無意識」への移行プロセスとして捉えているとのことです。
これは「スキルの自動化」と呼ばれていて、以下の習得の4段階意識の状態で説明されています。
1. 無意識的無能 知らない、できない自分が何を知らないかすら分かっていない状態(問題の存在に気づいていない)
2. 意識的無能 知っている、できない知識や問題に気づいているが、まだ実行できない状態
3. 意識的有能 知っている、できる集中して意識すれば、正確に実行できる状態
4. 無意識的有能 知らない、できる熟練し、意識しなくても体が勝手に動く状態(プロの技、直感)
これらは、私達が日常で行っていることの後付け理論と言ってしまえばそれまでですが、それこそが無意識と意識の境目だと思います。
その境目が上記1~4のどこにあるのかでいわゆる仕事のできる人(スキルの高い人)とそうでない人が分かれてくるということです。
1の段階では、IT技術者がOJTでメンターから指導を受け始めたころに該当すると言えます。
2の段階では、ある程度経験を積んで一通りの仕事がこなせるようになってきた2~5年目。
3の段階になると、5年目以上の中堅クラスが該当しますが、経験年数だけではなくその技術者のパーソナリティ等に左右される要素が大きくなります。
4の段階は、言うまでもなく中堅以上で仕事のできる人ということになります。
上記のことから、無意識と意識の境目は2と3の間、もしくは3と4の間にあると推察できます。
このことを踏まえ無意識の意識がビジネスにおいてどのようなメリットがあるかを考えてみました。
ここで言う無意識の正体は経験に基づいた直感や、過去の成功・失敗から学習したパターン認識のことで、4の段階にある人の意思決定は、膨大なデータ分析だけでなく、何かおかしいぞという直感(無意識のパターン認識)に大きく依存すると思われます。
この直感を意識的に「なぜそう感じるのか?」と問いかけ、言語化することで、根拠の曖昧だった判断を明確にし、データと直感を融合させた、より質が高い迅速な意思決定が可能になります。
そして、意識決定するだけでなく、部下や後輩、チームのメンバーに対して言語化して伝えることでブラックボックス化しがちな仕事ができる人の頭の中にあるものを共有できるようにすることが個人にとっても組織にとっても最大のメリットになると考えます。
そう考えると無意識は実は「無」ではなく、意識することを繰り返し積み重ねることで、人間の意識が追い付かないほどの迅速な判断ができるようになるということでそれを無意識と表現しているのではないでしょうか。
皆さんも一度自分の中の無意識の意識について考えてみてください。

