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2025.03.10

論理数学の推論

監査役 古川 正志

 一つの文A(命題)が正しいならば、もう一つの文Bも正しい(命題)の関係がある時、これを推論と呼びます。正確には正しいとは言わずAが真ならばBも真である関係を推論と呼びます。この関係を数学で扱うのが論理数学です。
 ところでこの推論の関係を理解するのに戸惑った人も多いと思います。この関係は論理数学の基本的な関係式(正確には結合演算子)で導かれます。最も基本的な関係式は、AND、OR、NOTです。これらは日本語で表すと
   OR:または、そして   AND : かつ、更に   NOT:否定、〜ではない
になります。二つの文では、
   A OR B:AまたはB
   A AND B:AかつB
   NOT A:Aの否定、Aは正しくない
となります。これらは、A OR BをA⌵B、A AND BをA⌃B、NOT Aを~Aと簡単に表現します。こうすると記号⌵と⌃は二つの文の関係を結合する演算子(計算を行うときの+や・のようなもの)となり、〜は一つの文に働きかける演算子となります。ところで文(命題)が正しいことを真(True、T)、正しくないことを偽(False、F)といいます。文AとBにはそれぞれ正しい(真である)時とそうでない(偽である)場合があります。二つの文AとBがこれらの演算子でき上がる関係は、二つの文A、Bでは真偽について4通りの組み合わせがあり、関係式(演算子)によってできる真(T)と偽(F)は以下のような表になります。

   | A | B |A⌵B|A⌃B|〜A|〜B|

    ――――――――――――――――
   | T | T |  T   |  T  |  F |  F |
   | T | F |  T   |  F  |  F |  T |
   | F | T |  T   |  F  |  T |  F |
   | F | F |  F   |  F  |  T |  T |
    ――――――――――――――――
この表を真理値表と言います。
 「Aが真ならばBも真である」とする推論は、やはり二つの文A、Bの関係ですから演算子として→を導入してA→Bと表現します。このとき真偽の組み合わせによる関係は、以下のようになります。
   | A | B |A→B|
    ―――――――――
   | T | T | T   |
   | T | F | F   |
   | F | T | T   |
   | F | F | T   |
    ―――――――――
考え方は→も普通の計算の足し算(+)や乗算(・)と同じような役割を持つことです。
これらは「Aが真でB が真でならば、A→Bは真」、「Aが真でB が偽ならば、A→Bは偽」、「Aが偽でB が真ならば、A→Bは真」、そして「Aが偽でB が偽ならば、A→Bは真」、を意味します。「Aが真でB が真ならば、A→Bは真」、「Aが真でB が偽ならば、A→Bは偽」であることは容易に理解できます。しかし、「Aが偽でB が真ならば、A→Bは真」、そして「Aが偽でB が偽でならば、A→Bは真」、については中々理解できません。
そこで、推論の真理値を覚えるのにA→B は表の縦にTFTTと理屈なく覚えます。しかし、やはり納得ができないと思います。推論の関係は「Aが真でB が真ならば、A→Bは真である」とのみ約束しています。従って、「Aが真でB が偽ならば、A→Bは偽である」は当然となります。それ以外は推論式A→Bは何も述べていないので、関係の結果を真として、「Aが偽でB が真ならば、A→Bは真である」、そして「Aが偽でB が偽でならば、A→Bは真である」と強制的に考える方法もあります。
これでも納得ができないかもしれません。その解消に屁理屈を考えます。「Aが真でB が真でならば、A→Bは真」とした推論の関係は、「(Aが成立してかつB が成立しない)ことはない」と置き直すことができます。これを論理の関係にすると、「(AかつBの否定)の否定」となります。式で書くと
  A→B = ~(A⌃(~B))
となります。そこでこの真理値表を計算してみます。
   | A | B | ~B |A⌃(~B)|~(A⌃(~B)) |
    ―――――――――――――――――――
   | T | T |   F  |  F   |   T    |
   | T | F |   T  |  T   |   F    |
   | F | T |   F  |  F   |   T    |
   | F | F |   T  |  F   |   T    |
     ―――――――――――――――――――
見事にTFTTが得られました。論理計算は、Tを1、Fを0と置いて⌵を足し算、⌃を掛け算として計算することもできます。ただし、1+1=1と約束します。この計算はブール計算と呼ばれます。

 実は刑事物のテレビドラマを見ていて、推理と推論はどう違うのかとぼんやり思いました。調べるとほとんど違いはなさそうです。そこで推理は推論の計算でできれば、ドラマの犯人は導けるかもしれないと思い、論理数学の推論を書いてみました。ただ、ドラマの筋立てはいくつかの推論過程は隠して最後の山場でそれを示すので、そう簡単にはいかないようです。機会があれば三段論法を推論で証明したいと思います。

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