前回は直線定規場上の上に薬びんの蓋に鉛筆をつけて転がし、その鉛筆が描く軌跡を求めました。今回は丸い皿をおき、その周りを薬びんにやはり鉛筆を転がした時の軌跡を考えます。実際の歯車は基礎円と呼ぶ円の周りに基礎円より小さな円を転がしたときにできる曲線を歯型として採用しています。基礎円の外側を転がして得られる曲線をエピ(外)サイクロイドと名付けています。
前回同様に最初に十字形にクロスする座標軸を作ります。横軸をx軸、縦軸をy軸とします。座標軸の原点をOとし、点Oを中心とした半径Rの基礎円(皿の円)を描きます。この円とx軸と交差する上方の交点を点Aとします。x軸の点Aから距離rの上方の点を中心に半径rの円を描きます。これが薬びんの蓋にそうとします。この半径rの円を時計回りに基礎円に接するように二つの円の接点が原点から角θまで回転させます。に接するように半径aの円を描きます。この円をx軸上で回転させ、制止させたとします。この時に出発した円の原点Oとの接点が回転して動いた円上の点をPとします。点Aから点Pの軌跡が求めるサイクロイド曲線となります。点Pから下ろしたx軸に下ろした垂線との交点をBとし、点Pからx軸に並行に引いた直線とy軸の交点をCとします。制止させた円の中心をGとします。この時に回転した円の回転角度∠OGPをψとします。そうすると
θ = ∠AOG
ψ = ∠CGP
となります。
点Pの座標がサイクロイドの軌跡を描く座標となります。まずx軸を求めます。回転した円の中心点Gから下ろした垂線とx軸の交点をDとし、中心点Gからx軸に並行に引いた直線とy軸の交点をEとします。そうすると点Pのx座標は
x = OD - BD
から求められます。OD = (R + r) sinθはとなります。ここで∠EGP= φとしますと
BD = PG cosφ
となり、
x = (R + r) sinθ− r cosφ
が得られます。φは
φ= ∠EGP = ∠DGP−π/2 =θ+ψ−π/2
となります。ここでπ/2はラジアンの単位の角度で90°を示しています。
少し面倒そうですが三角関数の計算をすると
cosφ = cos(θ+ψ−π/2)= −sin(θ+ψ)
ですので、
x = (R + r) sinθ+ r sin(θ+ψ)
が得られます。
次に点Pのy座標を求めます。
y = OE + EC
となります。OE = OG cosθ= (R +r) cosθ、EC = PG sinφ=r sinφとなりますから
y = (R +r) cosθ+ r sinφ
が得られます。φ=θ+ψ−π/2からsinφは三角関数の計算をしてsinφ=cos(θ+ψ)となりますから
y = (R +r) cosθ+ r cos(θ+ψ)
が得られます。
ところで基礎円上を薬びんの点AがPまで角度ψ回転した弧長の長さは、基礎円上で点Aが角度θ回転し回転した薬びんと接している点までの基礎円の弧長と等しいので
Rθ= rψ
です(角度がラジアンの時は、弧長=半径・角度になります)。これから
ψ = R/rθ
を得ることができます。これを先ほど求めた点Pのx、y座標に代入すると
x = (R + r) sinθ+ r sin([R+r)/r]θ)
y = (R +r) cosθ+ r cos([R+r)/r]θ)
となります。これでθを0から変化させるとエピ(外)サイクロイド曲線を作ることができます。
歯車の一点に力がかかるとこの力は歯車の曲線の接線方向と接線に直行する法線方向に分解できます。従って、歯車の法線方向に力が作用します。上で求めた式から接戦を求め、接線に直行する方向として法線を求めることができます。この法線方向に直線を引くとこの直線は基礎円と薬びんの接点を通過します。これから歯車にかかる力は常に基礎円と薬びんの接点に向かっています。
実際の歯車の曲線はピッチ円と呼ばれるところから外側の曲線がエピ(外)サイクロイド曲線とし、基礎円からピッチ円までがハイポ(内)サイクロイド曲線で作成し、二つのサイクロイド曲線を繋いでいます。ハイポ(内)サイクロイド曲線とは基礎円の内側に薬びんを接しながら回転させて作る曲線です。
エピ(外)サイクロイド曲線を基礎円に沿って一周させると花びらのような模様になります。基礎円の半径Rと薬びんの半径rを変えると色々な面白い模様が得られます。また、エピ(外)サイクロイド曲線を
x = (R + r) sinθ+ α sin([R+r)/r]θ)
y = (R +r) cosθ+ α cos([R+r)/r]θ)
のように一般化する(2項目の半径rをαに変え、もう一つのパラメータとする)とコイルを基礎円に巻いたような模様を得ることができます。興味があれば是非プログラムで描いてみてください。