前回に続いて2022年11月18日午前10時15分頃に打ち上げられた北朝鮮の弾道ミサイルの速度を計算してみました.今回は,飛行距離約1000km,最高高度約6,000km,飛行時間は69分でした.この数値を基に懸垂曲線と初速を計算してみます.懸垂曲線は
P(t) = (1-t)2P0 + 2(1-t)tP1 + t2P2
= (1-t)2[0 0] + 2(1-t)t[x1 y1] + t2[1000 0]
= [2(1-t)t・x1+1000t2 2(1-t)t・y1]
となります.t = 1/2 でミサイルの飛行距離が落下点距離の半分500(km),最高高度が6000(km)であることを上の式に代入すると,
[500 6000] = [2・(1-1/2)・(1/2)x1+1000・(1/4) 2・(1-1/2)・(1/2)y1]
となります.これから
(1/2)x1+(1/4)・1000 = 500
(1/2)y1 = 6000
を得ます.この式からx1とy1を求めると
[x1 y1] = [500 12000]
が曲線を吊り下げる鉛筆の頂点座標となります.従って,懸垂曲線の式は以下のようになります.
P(t) = (1-t)2P0 + 2(1-t)tP1 + t2P2
= (1-t)2[0 0] + 2(1-t)t[500 12000] + t2[1000 0]]
=[1000(1-t)t + 1000t2 24000(1-t)t]
=[1000t 24000(1-t)t]
ここで初速を計算してみます.
実際の時間はT=69tですから
dT = 69dt
となります.速度の一般式は実際の時間で懸垂曲線を微分して
dP(t)/dT = dP(t)/69dt
=(1/69)dP(t)/dt
=(1/69)[1000 24000(1-2t)] (Km/min)
となります.打ち出しの時はT=0ですからt=0をこれに代入すると
dP(0)/dT =(1/69)[1000 24000] (Km/min)
=[241.5 5797] (m/sec)
となります.初速度v0は√{(dx(0)/dT)2 + (dy(0)/dT)2}で計算できるので
v0 = √ (241.52 + 57972)
=5802 (m/sec)
=17.06 mach
となります.これは大陸間弾道弾(ICBM)に必要な速度と一致します.
ここで打ち上げ角度θを初速から計算してみます.打ち上げ角度のタンジェントは
tan θ = (dy(0)/dT) / (dx(0)/dT)
ですから
tan θ = 5797/241.5
となります.これから
θ = arctan (5797/241.5) (arctan()は逆タンジェント)
= 24 (rad) (ラジアン)
= 87.614 (°)(度)
となります.約87°が打ち上げ角度になります.
少し長くなりますが,17マッハのときのミサイルの最長の射程距離を計算してみます.ミサイルの軌道が放物線(懸垂曲線)のときは,打ち上げ角度が45°が最長の射程距離になります.
打ち上げ角度が45°のときの水平方向と垂直方向の速度は
dx(0)/dT = v0・cos(45°)
= 17.06・(1/√2)
=12.04 (マッハ)
=4094.9 (m/sec)
=243.5 (Km/min)
dy(0)/dT = v0・sin(45°)
= 17.06・(1/√2)
=12.04 (マッハ)
=4094.9 (m/sec)
=243.5 (Km/min)
となります.
ここで射程距離をx,懸垂曲線を作る三角形の頂点の高さをyとすると懸垂曲線は以下のようになります.
P(t) = (1-t)2P0 + 2(1-t)tP1 + t2P2
= (1-t)2[0 0] + 2(1-t)t[x/2 y] + t2[x 0]]
=[(1-t)t・x + t2x 2(1-t)t・y]
tに関して微分すると
dP(t)/dt = [(1-2t)・x + 2t・x 2(1-2t)・y]
となりtに関する初期速度は
dP(0)/dt = [x 2y]
となります.
dP(0)/dT =(1/69)dP(0)/dt
から
dx(0)/dT =(1/69)x
dy(0)/dT =(1/69)(2y)
ですから,dx(0)/dTとdx(0)/dTの先ほど計算した値を代入すると
243.5 = (1/69)x
243.5 = (1/69)(2y)
となり
x = 243.5・69
= 16804 (Km)
y = 243.5・69/2
= 8402 (km)
が得られます.これからこの弾道ミサイルの射程距離(x)は16,800Kmほどあることがわかります.また最高硬度は4201Kmになります.この射程距離は北朝鮮からアメリカ本土を攻撃するのに十分な距離となりま