回転する物(質点-大きさはないけど重さはある-)には回転中心があります.考えなくても当たり前のようなことですが,少し考えてみます(重さは正確には力ですので.本当は質量とすべきですが,質量ではピンとこないと思いますのでここでは重さとしておきます)
ある中心の周りを物が回っているとします,例えば,紐に物をくくりつけて手で回しているとか人工衛星が地球を回っている場合を考えます.この回転している物の回転速度をどう計算するのでしょうか.
人工衛星が地球を回っている場合を想定します.地球の半径をrとします.今,あり時刻tの衛星の場所をp(t)とします.ほんのすこし時間がたつとき,このほんの少しの時間をΔtとします.そうするとほんの少し時間が経過した時の時刻はt+Δtになります(時間と時刻を区別しています).この時の人工衛星の場所をp(t+Δt)とします.人工衛星がp(t)からp(t+Δt)への移動はほんの少しの回転で行われます.このほんの少しの回転角度をΔθとします.Δθの角度の単位をラジアン(rad)とします.
ところで,一般に使用されている角度は度( °)が使われています.θラジアンとθ°(度)の関係は
θ:θ°=2π:360°
と比例式になります.円一周の角度を360°としていますが,ラジアンでは2πとしています.πは円周率です.そうすると
θ= 2π・θ°/360 または θ°=360・θ/2π
で計算されます.半径rの円がある点からある点までθ°(度)回転したとします.このある点からある点までの円弧の長さlは円周の長さと次の比例式となります.
l:2πr = θ°:360
従って,
l = 2πr・θ°/360
と求まります.θ°の先ほどのラジアンの式を代入しますと
l = 2πr・[360・θ/2π] /360
となり,2πと360が約分されますので,円弧の長さは簡単な式
l = rθ
となります.ラジアンを使用すると円弧の長さの計算は簡単になります.
話を元に戻して人工衛星がほんの少しの回転角度をΔθ回転した時の人工衛星の移動した距離は,Δθを回転した時の円弧の距離になります.この距離をΔl としますと,ラジアンを用いた円弧の長さを使用して
Δl = rΔθ
となります.速度は移動距離を計画時間で割ったもの(比)ですから,人工衛星の速度をvとすると
v =Δl /Δt = rΔθ/Δt
となります.Δθ/Δt は回転角度を回転時間で割ったものです.時刻tの速度はほんの少しの時間増加Δtを限りなく0に近づけた時でこれを角速度と呼び,ωで表します.従って,人工衛星の速度vも時間増加Δtを限りなく0に近づけた時ですので,正確には
v =Δl /Δt (Δt →0) = rΔθ /Δt(Δt →0) = rω
で計算されます(Δt →0はΔtを限りなく0に近づける意味です).
今,人工衛星が1回地球を回ったとします.そうすると回転した距離は2πrになります.人工衛星の角速度がω,その時に要した時間をTとすると回転した角度θはθ=ωTとなり回転移動した距離lはl = rθ= rωTとなります.この二つの距離は等しいので
2πr = rωT すなわちωT=2π
となります.これから人工衛星の角速度は
ω=2π/T
となります.この1回の回転に要した時間を周期(時間)と言います.また,f = 1/Tと置けば
ω=2πf
となります.fを周波数と言います.fは単位時間1(例えば1秒)を周回時間Tで割ったものですから,単位時間で周回した回数となります.
人工衛星の速度は周期を使うと,v = rωから
v = 2πr / T
で計算できます.つまり,地球の半径と人工衛星の周期時間(地球を1周する時間)がわかれば,人工衛星の速度を計算できます.
今回の話は人工衛星の速度を計算することではなく,ある物が回転運動をしている時の中心が目的です.速度は回転運動の中心からの距離と角速度からv = rωとして求められました.この回転半径rをどんどん中心に近づけ最後に0とすると速度も0になります.回転している物体で半径を小さくしていき速度が0となる点を回転運動の中心と考えることができます.この運動の中心を瞬間中心と言います.皿回しで棒が皿と接している点の回転速度は0でその点が瞬間中心です.また,歯車が回転している時では歯車の中心(軸)が瞬間中心でその点での速度は0です.