前回,貴金属比の導出をする計算を行いました.第一金属比は1.618:1,第二金属比は2.414:1となりました.これらの比は長方形を考えると,縦の長さと横の長さを1:1618,あるいは1:2.414にすると実現できます.モナリザの絵では顔の輪郭が横幅:縦幅=1:1618に描かれています.更に,上半身の構図が鼻と唇の上を長方形とし,その長方形を基に黄金比で作成していくと8つの長方形の中に収まっていることが知られています(興味がある方はモナリザと黄金比で調べてみて下さい).第二金属比は,日本武道館の屋根の正八角形に見ることができます.正八角形では一片の長さとその高さの比が1:2.414になっています.
第二金属比は白銀比(プラチナ比)とも呼ばれていますが,白銀比には大和比と呼ばれる日本で古くから使用されているものもあります.この比は,長方形で考えると縦の長さ:横の長さ=1:1.414になります.第二金属比の2.414から1引いたところに不思議さを感じます.この大和比は,正方形を作ると一辺の長さ:対角線の長さになります.正方形の一辺の長さを1とすると,ピタゴラスの定理から
斜辺の長さ=√(12+12)=√2=1.414
となります.この大和比は大工さんが使用する「曲尺(かねじゃく)」というL字型のメモリとして使用されています.曲尺の表面の目盛は普通の目盛ですが,裏面の目盛は1.414倍で刻まれています.丸太から角材を切り出す時に,角材の辺の長さが計算しなくとも分かるようになっています.
大和比は日本で使用されている紙の規格であるA判,B判の縦横比にはこの比率が使用されています.大和比ではA0判の紙の大きさが,横の長さ841mm,縦の長さ1,189mmとなっています.841:1,189=1:1.14139ですから,ほぼその日は1:1.414となります.このA0版の紙の縦を半分にするとA1版と大きさとなりますが,やはりその大きさは大和比が保たれています.同じようにしていくとA6版までが得られます.この比の不思議さは常に長方形の縦を半分にすると大和比が守られていることです.A版はドイツの物理学者であるオズワルドによって提案された規格でアメリカ以外の多くの木にの国際規格サイズになっています.アメリカでは今でもレターサイズを用いていますが,レターサイズの横の長さは215.9mm,縦の長さは279.9mmとなっています.この比率を計算すると1:1.296となります.
B0判の紙の大きさは,横の長さ1.030mm,縦の長さ1,456mmとなっています.やはり縦を半分にしていくとB1版,B2版, ... , B6版の紙の大きさが出来上がります.B版は美濃紙が起源と言われ,日本独自のものです.
大和比は建築物では日本最古の木造建築と言われる法隆寺の正面からみた5階の屋根の横幅と1階の屋根の横幅に使用されていることが知られています.また,東京スカイツリーの地上から第二展望台までの高さとスカイツリーそのものの高さの比にも使用されているそうです.