中国での冬季オリンピックが,事なきを得てとは言わないですが終了しました.テレビというフィルターのある箱から通して入ってくるオリンピックは,日本人にとって色々と感じさせれたのではないでしょうか.スキージャンプスーツ規定違反,スケートリンク上の氷穴による回転の失敗,女子パシュート決勝での最終コーナーでの転倒,15歳の少女のドーピング問題などは日本人にとって大きな関心を呼んだと思います.一方で,スキージャンプ,ハーフパイプ,女子1500mの金メダル,カーリングの選手自身の思わぬ銀メダルなどはスポーツによる感動を私たちの目に焼き付けてくれました.
中国の話題でというわけではないですが,最近のテレビで中国時代劇ドラマにはまっています.中国の春秋戦国時代を描いた宮城谷昌光の小説・短編を読みふけっていましたので,宮城谷の描く中国春秋戦国の風景と重ねて見てしまいます.今,進行しているドラマでは「始皇帝」,「長歌行」「陳情令」,少し前までは「山河令」を見ていました.
「始皇帝」は勿論主人公が嬴政(始皇帝の名前)です.中国500年の戦乱の世を統一した英雄としてドラマの冒頭の歌で称えられます.まだ前半なのですが,奇貨居くべしで有名な呂不韋,偉人(嬴子楚,始皇帝の父親),嬴政の少年時代から嬴政が秦の王となり呂不韋が呂氏春秋を書き上げ,しかし嬴政と徐々に反りが合わなくなる過程が描かれています.日本の秀吉や家康のドラマで必ず出てくるようなセリフ「戦のない統一国家を作る」が,やはり語られます.面白いのは呂不韋が相邦(丞相)として合議体による国家を作ろうとするのですが,呂不韋の失格を密かに願う次の嬴政の相邦となる李斯は封建制を廃止した中央集権体制による国家を作ろうとします.宮城谷の短編では李斯は,師匠である墨子を彼が相邦となるのは世も末と嘆いたとあります.李斯の思想は法家であり全てを律令でがんじがらめにする思想で,法令を犯せば一族連帯して罰する,儒家の思想は問題があるとして焚書を行なった人間として歴史に残ります.しかし,ドラマでは嬴政の右腕として中国統一を成し遂げた人物として描かれていくようです.先ほどの中国500年の戦乱の世を統一した英雄というのが今の中国の体制を何とはなく想像させます.
長歌行は隋を滅ぼしたばかりの唐の時代の皇帝の娘のアクション時代劇です.唐の時代に秦の王,魏の王,趙の王などの言葉が出てくるので,唐の時代はかっての戦国時代の国の領地を子供達に封建していたんだと気付きました.話は女性の主人公が陰謀によって皇宮を追い出され,夷人たちと戦いを行なったり協力するという話です.他の二つも時代的には唐ではないかと推測されます.これらのドラマでは中国人のイケメン・美女がたくさん出てきます.本当にイケメン・美女なので驚きます.なんでこんなのを見るのと聞かれるかもしれませんが,私は立ち回りが好きで見ています.中国剣法の立ち回りとフットワークが面白いのです.ドラマで見る中国拳法のフィニッシュは突きの形で右手に剣を持ち両手を左右に開き,足は右足を前として30度/60度の直角三角定規の形を作ります.このフィニッシュはフェンシングの突きの形に共通するものがあるからです.また,フットワークが日本の剣道は前後を中心としているのに対して,中国と韓国のフットワークは回転する足技がよく採用されています.この違いは何かなと考えたりします.多分,剣を片手で持つか両手で持つかによるのかと思ったりします.というわけで活劇が好きな私にとっては,まだまだ中国時代劇に時間を持っていかれそうです.