今回は2次元,すなわち長方形の黄金分割を考えます.長方形の黄金分割は次のように作成します.
最初に長方形を想定します.この長方形は横長で左上隅から半時計回りに長方形の角の点にA,B,C,そしてDと名前をつけ,長方形ABCDと呼ぶことにします.こうすると上辺はAD,下辺はBC,左側の辺はAB,右側のDCとなります.長方形の大きさを縦の長さを1(AB=1,CD=1),横の長さをx(AD=x,BC=x)とします.ここで,長方形の上辺ABに点Aから長さ1になるところに点を作りこの点をEとします.同様に長方形の下辺BCに点Bから長さ1になるところに点を作りこの点をFとします.点EとFをつなぐ直線を引き,長方形ABCDを二つに分割します.分割された左側の部分は縦と横の長さは1となり正方形になります.これを正方形ABFEとします.もう一つの部分は縦の長さが1,横の長さがx-1になります.この長方形をEFCDとします.
黄金分割とは長方形ABCDと分割されてできた右側の長方形EFCDが相似になるような長方形と分割をいいます.数学の記号で書くと
長方形ABCD∽長方形EFCD
です.このような長方形の縦の長さに対する横の長さの比xを求めます.二つの長方形は相似ですから,
AD:AB = CD:ED
が成立します.これから
x:1 = 1:(x - 1)
を得ることができます.従って,x (x - 1) =1を得ます.これは
x2 - x - 1 = 0
の2次方程式になりますから,
x = ( 1 + √5 ) / 2 = 1.618...
を得ることができます.これは1次元の時の分割比と同じになります.横の長さを1とした時は,1:0.618...になり,縦横比を4:6の長方形を作りこれを横の長さ60%位のところで分割すれば黄金比をもつ長方形を作り,それを分割したことになります.
上記のような黄金分割を行った小さな長方形(右側の長方形EFCD)をやはり長辺に沿って黄金分割します.次に,やはり分割された小さな長方形を同じように分割していくと,次々と分割を行うことができます.この分割で得られた長方形を最初の長方形の点Bに相当する点を繋いでいくと螺旋を作ることができます.逆にすると,最初に黄金比をもつ小さな長方形を作り,短辺の方向にほぼ4:6の長さで新たに長方形を作ります.この二つの長方形を合わせた長方形の短辺の方向にほぼ4:6の長さで長方形を作ります.
更に,三つの長方形を合わせた長方形の短辺の方向にほぼ4:6の長さで長方形を作ります.これを繰り返していくとどんどんと黄金比をもつ長方形を作り出していくことができます.これらの長方形の角を先の長方形ABCDの点Bの場所で繋いでいくとやはり螺旋を作っていくことができます.この螺旋は自然界の種子の配置やダビンチのモナ・リザの中に見ることができるといわれています.
以前にフィボナッチ級数とそれによってできる螺旋の話を行いましたが,非常に似ていることが分かります.黄金分割では長方形の辺の比は,元の長さ:分割の長さ=1.618...でした.フィボナッチ級数は,1,1,2,3,5,8,13,21,34,...でしたから,フィボナッチ級数で作った螺旋の辺の比は,
1/1=1,2/1=2,3/2=1.5,5/3=1.66,8/5=1.6,13/8=1.625,21/13=1.615...,34/21=1.619...
と段々と黄金分割比に近づいて行くことが分かります.これからフィボナッチ級数で作る螺旋と黄金分割でできる螺旋は究極には同じになることが分かります.