古来より最も美しい分割の比率として知られているのが黄金比です.黄金比がどのような値になるかを計算してみます.
今回は1次元の場合,すなわち直線(正確には線分)の分割を考えます.まず,直線を引きます.この線分の左端の端点を記号Aで表します.また,右端の端点をBで表します.この直線をABとし,その長さをL0とします.直線ABを端点Aからある長さで分割します.この分割点をCと表します.こうすると直線ABは,直線ACと直線CBに分割されます.直線ACの長さをL1,直線CBの長さをL2とします.ここで,長さL1とL0の比と長さL2とL1の比を同じになるようにします.この比の値をxと置けば,
L0/L1=L1/L2=x
と数式で書けます.直線ABは直線ACと直線ABに分かれていますから,
L0=L1+L2
が成立します.前の式で,L0=xL1,L2=L1/xが成立しますから,この値を上の式に代入すると
xL1=L1+ L1/x
を得ることができます.両辺をL1で割ってから両辺にxを乗じてやると
x2 = x + 1
の方程式が得られます.これは
x2 - x - 1 = 0
の2次方程式になります.解(根)の公式から
x = (1+√5) / 2 =1.618...
となります.この値が黄金分割比と呼ばれる値です.L0とL1の比にするとxの逆数の計算をして0.618...となります(逆数がもとの値から1を引けばよいというのも不思議ですが).このことから,もとの長さの6割くらいのところに分割点Cを作れば良いことになります.直線を分割するとき最も美しい分割は6:4くらいだと分かります.人間の美しいプロポーションを持つ人は身長に対して,足の裏からおヘソまでの長さがこの黄金分割比もつを約60%の人とも言われています.ネクタイピンをするときも首から約40%(ネクタイの下の橋から60%)が美しく見えるのかも知れません.黄金分割は,1次元の最小値を探す最も効率的な探索法としても応用されています.
次回は2次元の,つまり長方形の黄金分割を考えてみます.